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参章ー合衆国崩壊へー

 2005年8月01日

午前7時
ビリー・テイラーは眠気を覚ます為にホテルのベランダから外を見渡した。

空は青く澄んでいる。よし今日はプールで日焼けしよう、と思ってホテルのプールを見下ろして唖然とした。

プールが赤く染まっている…
周りを見ると開いた口が閉まらなくなった。

道行く血だらけの人々が地面を赤く塗りながら、走って逃げ回る人々を襲っている…

まるで映画で見たような光景だ。

まさか夢ということはあるまい…

室内電話を使い慌ててフロントに電話をする…が、誰も電話にでない。

どうやらこのホテルも安全ではないようだ…

直ぐにここを出なければ。

ヘリコプターの音が聞こえてきた。
米軍の強襲ヘリコプターMHー60Lブラックホークだ。

よく見ると12機見える。

どうやら各機はそれぞれホテルのヘリポートに着陸するようだ。

このホテルも着陸場所の対象となっているらしい。

屋上にいけば助かる。
そんな確証もない考えで部屋を飛び出ていった。

幸いにもスイートルームのあるこの階には、まだ血生臭い光景はなかった。

非常階段のドアを開けたところで、何者かに引っ張られた。
「博士、無事ですか。」と言われて初めて救助だと気付いた…
見た所この重武装は米軍のもので間違いないだろう。

しかし隊に1丁あるかないかのM249を全員が装備しているのは通常ではない。

外も通常ではないから当然だろうが…

何はともあれ、民衆から悪魔扱いされても軍隊からは見捨てられてないようだ。
そのまま屋上まで走らされてブラックホークに乗せられた。
隊長らしき男が「博士をお連れしろ。」と言うとパイロットはヘリコプターを離陸させた。

今まで他の事など考えている暇などなかったが、安全になったところで冷静に今の状況を把握できるようになった。

下を見下ろすと地獄絵図を垣間見たような気分になった。

逃げるものとそれを捕食しようと追いかける生ける屍…

父のせいで世間からは批判しか浴びず、その上に研究など認められたことなどなかったが、今こうして軍隊から助けられたのは、ある意味父親のお陰かも知れない。


父は、科学者だった…

それも戦争に加担するような憎い親であった…

父の手記によると毒ガスの製造に携わっていたらしい。

それも世界最凶の神経ガスの製造に…

自身も昔は科学者になることに憧れていたので父からよく話を聞いていたが、どのようなものか実感など沸かなかった…

世界的に有名な、ドイツのシュレーダーが作ったGガスと呼ばれるものがあった。
しかし父が研究に加わっていた神経ガスは、その10倍もの効力がある。そう、父の携わっていたのは英国が世界に誇るVXだった…

そして父の手記はこう締め括られていた

「私は人を殺すために科学者になったわけではない、人類を救う為に科学者になったのだ。

VXは世界を救うには不十分だが、間に合わせにはなるだろう。
親愛なる息子へ…
あれに噛まれてはいけない、全ての鍵はハルビンにある。世界が滅亡する前に必ず来るんだ。」

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